どんな商売も、はじめはゼロ円からのスタートです。
ゼロ円の意味は、もちろん売り手と買い手の間に価値が生まれていない。ということがありますが、それだけではありません
ゼロ円からスタートする方が、むしろ妥当だとすら思えます。
売り手にとっては、自分のサービスをまず相手に届けることができます。このことが重要だと思うのです。
目次
- はじめは無料から。離れられない信頼関係を作る利点3つ
- 1.信頼関係がゼロなら収益もゼロ
- 2.売り手と買い手の関係が成長すれば、値上げできる
- 3.サービスのアイデアを絞り出そう
- まとめ 先に味わうと、抜けられなくなる。
はじめは無料から。離れられない信頼関係を作る利点3つ
ただでもいいから、自分の提供しているサービスを体験してもらう。ここが肝心です。
あなたが始めたサービスについて、いまのところ価値があると共感しているのは、あなた自身だけです。
それ以外の人達は、価値どころか、あなたのサービスの内容を知りもしません。
その状態で、評価も価値もありません。見たことも触れたこともないサービス・製品には、当然ながら値段の発生も、価値の交換も何もないのです。
取引のスタートラインに経つためには、こちらの提供する物が、相手にとって欲しいものになる必要があります。
となれば、少なくともあなたのサービスや製品が知られていることが肝心です。
車やパソコン、スマホや家電などは、こちらが説明せずとも購入者の方で使い込んできているので分かっています。あとは従来品に比べ、よりよい改善点が示されれば購入となるわけです。
しかし、相手が製品の内容をよく理解できないものもあります。たとえばマッサージのようなサービスは、受けてみるまで、購入者が気持ちよくなれるかどうかは分からないのです。
賃貸マンションなども、住んでみるまでよくわからない、ということがあります。
もちろん内見はできますが、一回の内見で、その後1年や2年の住み心地がどうなるかまでは、到底分かりません。
分からないだけに、価値を見いだすことができないのです。ましてやそういったサービスや製品にも、当然ながらボランティアではない以上、一定の値段がついています。
ある程度使い込んできて、使い勝手も相場も知り尽くしている車やパソコンと違い、購入した金額に見合うかどうかすら予想できないサービスが、世の中にはたくさんあります。
そこには売り手と買い手の間に価値のコンセンサスはありません。アパートの契約時、マッサージ料金の購入時、などは、一方的に売り手が価値を押しつけるような状況の中、支払いが行われます。
目に見えにくいサービスであれば、その傾向は顕著です。そして、そこに高い価格がつけば、消費者はよりいっそう引いてしまいます。
これが、不況と重なって、よりモノが売れにくい時代に拍車をかけていると思います。
1.信頼関係がゼロなら収益もゼロ
もしかすると、使ってもいないサービス、慣れてもいないサービスに先にお金を払う、ということの方が、おかしいのかも知れません。
売り手と買い手の間で価値の交換がくり返され、信頼関係が出来上がったら、ひとはそのサービスを味わいつくすようになっていきます。
その価値にどっぷりと浸かってしまうのですから、ぬけられなくなります。
といったわけで、無料でまず商品を提供するサービスが増えているのも、うなずけます。
AmazonプライムやNetflix、spotify、huluなどのサブスクリプションのように、月額支払いでのサービスが「最初の3ヶ月無料」「初回から10回まで無料」などとしているのも、そうしたことの応用のなのかもしれません。
まずサービスに触れてもらう。よかったら有料に移行する。
価値の交換を無料でくり返すことによって、売り手と買い手の双方で、価値を上げていくというわけです。一定の価値が見いだされたところで、収益が発生します。
この一見商売成立の流れと逆の流れに支払いを持ってくる方が、効果的なのかも知れません。
人は、「クセになるほど」サービスに親しんでしまったら、よほど自制心の強い人でなければ、そのサービスを抜けられません。
買い手にとって「価値あるモノ」が、「習慣の一部」となってしまったら、多少値上げされても、もう抜けられないのだと思います
僕も、たとえば明日からAmazonプライムが100円値上げします、といっても、文句いろいろいうものの、結局は会員はやめないと思います。
おそらく500円くらい、いや1000円くらいまでは、値上げされてもやめないでしょう。
タバコなんかもそうだと思います。タバコ税がガンガン値上げして、喫煙者も減ってきてはいるものの、タバコはお金の続く限り辞めないという根強い人気もあります。
これはサービスの価値が、買い手に刺さっている好例です。
もはや辞められない。という仕組みに買い手を誘導するには、この仕組みの方が合理的と言えるのかも知れません。
このくらい本人にとっての価値が習慣に根付くとこともで発展すると、多少の値上げではびくともしなくなります。
価値と価格のゆがみが生じるというわけです。それだけ、先に味わってしまう効果は絶大です。
賃貸経営も、これにあやかって1ヶ月家賃を無料にする「フリーレント」などがよく条件に盛り込まれていることがあります。
なんでもかんでもフリーレントにする必要は無いと思います。
ですが、とにかくまずは住み心地を味わってもらう、入居者と大家との間に信頼関係をつくってしまう、などという狙いがあるのなら、もたらす効果を大きくできると思います。
2.売り手と買い手の関係が成長すれば、値上げできる
売り手は、先にまずサービスを提供することで、届けようと思っている価値をまず買い手に確実に届けることができます。
さらに、その商品の評価やクレームを受け取ることによって、より消費者にあった商品やサービスに変えていくことができます。
収益が発生して、本格的に取引が始まる前に、より消費者に寄り添った形でサービスを提供できます
また消費者は、最初が無料であるという恩恵に加え、継続的なサービス内容を確認することができます。
売り手と買い手は、無償でのこのようなお互いの価値の交換を通して、お互いの信頼関係や、商品・サービスに対する信用度を上げることができます。
売り手、買い手両方にとってwin-winのサービスに仕上がった状態で、収益が発生していくというわけです。
この状態になれば、値上げすることも可能です。
売り手は買い手との信頼関係構築の中で、より消費者のニーズに応えた、市場によりマッチする商品を提供できるようになっているのですから、今まで以上に商品の価値に自信を持っていいわけです。
一方で買い手は、どっぷりとサービスのよさに触れ、また時には改良まで行ってもらってしまったら、劇的な価格上昇でもない限りは、そのサービスをやめることなどできないでしょう。
先月、僕は賃貸マンションの更新月を迎えましたが、更新料を家賃一ヶ月分取られました。
更新料が何のためのお金かはよく分かりませんが、家賃一ヶ月分を余分に取られ、高いなぁと思ったにもかかわらず、引越しには至りませんでした。
面倒くさいのと、いまさら他の家に引っ越すほどの金銭的余裕もなかったのです。悔しいけれど一ヶ月分を払った方がマシという結論に至りました。
値上げや追加料金を行っても、それまでのサービスにどっぷりと浸かってしまっていたら、辞められないのです。まさに「現状維持バイアス」が働いてしまいます。
3.サービスのアイデアを絞り出そう
というわけで、売る、ということについて大事なのは、価格に見合う価値を顧客に理解してもらうことではないと思っています
こと賃貸経営のような、サブスクさながらのビジネスモデルにおいては、まず先に顧客に価値を知ってもらうことが大切です。
ニーズ確認や価値提案、顧客との合意など、数年前にビジネスでは常識とされた話ですが、もはや通用しづらくなっています。
変化の早い時代の中で、確実に売りにつなげるためには、まず価値を届ける。ということだと思います。
値段は度外視して、まずは届けたい価値を実際に届けてしまいます。値付けは、顧客がやってくれます。
例えばヤフオク!などのようなサイトでは、オークションが日々行われています。
これも0円から多くの商品が出品されていますが、多くの商品の価格がつり上がっていきます。
ヤフオク!はこの販売形態で、長らく顧客から信頼と指示を得てきました。
いかにして価値を届けるか?そのアイデアを絞ることに焦点を当てるべきなのです。
そう考えると、もう価格引き下げなどはかなり最終的な手段となってきます。むしろ闇雲に家賃を下げても決まらない物件は、価値が届いていないのかもしれません。
まとめ 先に味わうと、抜けられなくなる。
ここまでの話をまとめてみますと
1.信頼関係がゼロなら収益もゼロ
Amazonプライムというサブスク成功例が示すように、顧客と商品との間(今回の記事で言えば、顧客と物件)に価値がうまれていて、顧客がその価値にはまってしまったら、もう抜けられないということです
2.売り手と買い手の関係が成長すれば、値上げできる
本格的な購入を前に、売り手はサービスについてのクレームを処理する。買い手は不満点や疑問点を述べて、より自分なりの快適な商品に仕上げていく。商品の価値を通して売り手と買い手の関係が成長すれば、さらなる快適を求め、むしろ値上げしてくださいという状況にすらなるでしょう
3.サービスのアイデアを絞り出そう
いかにして製品(物件)の価値を顧客に知ってもらうか。顧客にとって製品(物件)が顧客の生活にどれだけマッチするものなのか。この部分をよりわかりやすく伝えるための工夫やアイデアを出すことが第一優先です。値下げなどという選択肢は、なくてもいいくらいかも知れません
かつて丘の上にあって、立地条件は決してよくなかった僕のシェアハウスは、ようやく満室になりました。
滞在期間が短いシェアハウスで、最後に入居した人を除き、最初の半年を負え、ほぼ全員が1年以上で賃貸契約を継続してくれました。
入居者の人々は、シェアハウスの生活に、テレビにあるような恋バナや友達作りを夢見ているわけではありません。
家賃を抑えながらも気持ちよく住み、生活を安定させ、より豊かになり、いずれもっといい家に引っ越したい。こういう人達が多いです。
入居時にこのことが確認できたので、シェアハウスでの生活が、人生の中心とならないようにしています。
まずは物件がさっぱりと綺麗であること。そして最低限の家具がそろっていて、きちんと生活できること。住民同士の余計な気遣いがないことをメインに管理しています
また、ここでの生活で貯金ができるよう、蓄財のノウハウや節約アイデアの共有などを行っています。
ここに住んでいれば、自分の描いている人生が後押しされる、というイメージを持ってもらえるようなサービスに努めています。
1ヶ月のフリーレントで入居した方も何人か居ますが、長く住んでくれているので、だいぶ元が取れました。
はじめのころは、いろいろと要望にも応えていたので、毎週物件に通っていましたが、いまは1ヶ月に一回の訪問でも十分管理できています。
行く回数、要望に応える回数が減った分、さらに経費が下がり、収益がアップしました。投資効率が上がったのは良かったと思っています。
皆、住み始めは半年や10ヶ月くらいを目途に引越しを考えていたようなので、このように変化した対応を見せてくれたのは、経済的にはもちろん、精神的にも大家としてのやりがいを感じました。
売り手も買い手も、最初はゼロ。お互いに成長することで、理想の価値がうまれると思います。まさに「先行投資」そのものですが、その効果は高いのではないかと思っています。